コラム

星野真里の“いろどり日記”
「Popping time」

24.06.01いろどり日記

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透明な液体の中を駆け上がる無数の空気の粒。

気温が上昇するにつれて飲みたくなるものの一つが炭酸飲料だ。
口の中でもなお、空を目指すがごとくはじけてほんの一瞬、体も心も浮かびあがるような爽快感を与えてくれる。
幼いころから甘い炭酸を好んで飲んできたけれど、最近は糖分の入っていないものを選ぶことが増えた。
酸いも甘いもかみ分けてきた今だからこそ感じるうまみがある!と思っていたりする。

宇宙の王様、太陽の強力なエネルギーが降り注ぐこれからの季節は炭酸飲料に限らず水分補給は必須。
のどの渇きを感じる前に飲む。
鞄の中にマイボトルというスタイルは私の中で定着しつつある。

今年は久しぶりに長期間家を離れ、博多の地で舞台に立たせていただいた。
家が大好きなわたしにとって過酷な状況かと思いきや、実はこれ、かなりのご褒美的なお仕事。
もともとわたしは掃除も洗濯も好きなのだが、それでも誰かが代わりにやってくれるという状況は嬉しいもの。
それらの家事から解放されて大好きな仕事に集中することができ、
さらにはその仕事から帰るといつもきれいな部屋がお出迎えしてくれるなんて。
本当に夢のような生活だった。

この旅の準備を始めるとき、まず探したのが調理器具。
外食に頼らざるをえないホテル暮らしでも、できるかぎり自炊をしたいと思い、
ご飯を炊く、だけではない使い方のできる電気鍋はないかとインターネット上のみならず、
店頭にも足を運び色々な商品を目にした。
その結果選んだものは、黒いボディーに金色の取っ手のついた電気圧力鍋。
ふと目に入ったときに気分があがるかどうか、最後の決め手はそこだった。
photo by mari hoshino
色や形、ときに香りや触感のこともあるだろう。

自分の気分があがるもの、それこそが必需品なのだと思う。

香りのよいリップクリーム、つけ心地の良いクッションファンデーション、
かさばるけれど触り心地のたまらないパーカー、そしてちょっとおしゃれな電気鍋。
荷物の限られた旅だからこそ、心と体が何を必要としているのかを知るチャンスでもあったのだと思う。
それぞれのタイミングでわたしの心を盛り上げてくれるものに囲まれて、無事、私はご褒美の旅を終えることができた。

出会った瞬間、レモンをかじった時のようにキュインと心が反応して、私のものになってくれた物たち。
それは過去のわたしを知る物たちでもある。
どうしてこれに惹かれたのだろうと不思議に思うこともあるけれど、
その時のわたしがいてくれたから今のわたしがいる。
そう思うと、どれもこれもが愛おしい。

今のわたしは何に気分があがるのだろう。
そう考えながら見る世界には、たえず空へと向かう気泡がいたるところであがり続けているような気がする。


飛び出していいよ グラスの水面をゆらす気泡のいまは透明
photo by mari hoshino
星野真里

星野真里

女優・タレント。1981年7月27日生まれ,埼玉県出身。O型。1995年にNHKドラマ『春よ、来い』でデビュー。同年にTBS系ドラマ『3年B組金八先生』に坂本乙女役で出演し、認知度を高めた。

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